「さよならのその日まで」③~ペットとの最後の時間を大切に~

第3話:夕焼けの散歩

ある日の夕暮れ、ココと一緒に少し遠くまで散歩に出た。
沈みかけた太陽に空が赤く染まり、風がそっと頬を撫でる。
ココは少し疲れた様子で歩くが、時折立ち止まって夕日の光を見上げる姿が愛おしい。

道端の花の匂いを嗅ぎ、風に揺れる葉を見つめる小さな瞳。
その仕草ひとつひとつが、これまでの日常の中で見過ごしていた大切な瞬間であることに気づかされる。
最後の散歩になるかもしれない――そんな思いが胸に静かに広がる。

悲しみが胸をよぎるけれど、今はただ寄り添う時間を大切にする。
飼い主はそっと手を差し伸べ、ココの小さな背中を包み込んだ。
夕暮れに染まる二人の影は、静かに長い愛情を物語っていた。